2019.12.20 停電時の車活用

いま経済産業省では「電動車活用社会推進協議会」を立ち上げ、防災活用WGが設置されています。
カーメーカー各社も千葉県大停電での車活用の経験から課題と展開を検討しています。
弊社は昨年9月の北海道ブラックアウト以来、セイコーマートが広めた車からの給電によるあらたな停電対策についてその課題を研究し対策を提唱してきました。
セイコーマートでは1100店舗を車のシガーソケットからインバーターを介してキャプタイヤケーブルを店内に引き込むことで LED電球とレジの電気を供給しました。セコマではインバーターとコードケーブルと LED電球をセットとして各店舗に備えておき停電時に備えておくことで、全道ブラックアウト時に地域の食料、水、日常用品を供給する貢献ができました。
ただし、この全1100店舗の内50店舗程度ではマニュアルにあるレジと LED電球以外の負荷をかけてしまったため車のインバーターのヒューズを飛ばしてしまい開店出来なかったそうです。
停電対策の嚆矢となったセコマ方式が教えてくれた課題のひとつは電力使用の制御方法です。

危機管理の原則は考えられない事態まで想定して備えることです。
容易に想像できるシュミレーションとして、真冬の北海道で今年2月に襲来したような史上最強寒波マイナス30度の夜にブラックアウトとなった場合に暴風雪下の避難所ではなにが起きるでしょう。
可搬型発電機が常置されていても1時間に1度、徹夜で屋外にガソリン給油に出る担当者が必要です。それでも消防法で規制されているガソリン缶20リットルを一晩で使い果たした後には暴風雪のホワイトアウトで除雪も追い付かない道路ではガソリン補給に行けません。台風15号のような豪雨暴風の下では横殴りの雨を混じらせずに給油することができるでしょうか。

新型ハイブリッド車からの給電ならば1500Wの自家発電機としてガソリン満タンで2日から3日程度の給電が可能です。
厳寒期の避難所では電気毛布で50から100人もの命が救えます。

しかしいまセコマ方式の課題を克服するために避難所のマニュアルに電気使用の制限について認識し記載されている自治体があるでしょうか。
メーカー、車種、年式によって制御方式は違いますが原則インバーターも車載コンセントも設定電流値を超えるとヒューズが飛ぶか、制御システムが働きます。混乱する避難所の中でタコ足状態の電気使用電流値を管理出来ない場合には車からの給電はストップしてしまいます。マイナス30度のホワイトアウト状態の屋外に車のヒューズ交換や制御リセットに出る作業は二次災害を伴う命がけの仕事になりかねません。
車種によっては突発電流などを考慮して1500Wを超えてもなお給電し続ける設計のものもあります。しかし避難所の大勢の人がルール無しで過電流状態を続けると恒常的な電圧低下が起こり機器のトラブルにも繋がります。 まずLED照明がチカチカしだし次に不点になり、テレビもパソコンも点かず電気機器は所定の性能を出せずに故障の可能性もあります。なにより照明がチカチカしている段階で避難所の中の人たちにとってはいま何が起きているのかわからないという混乱がおきます。
こういう事態を想定すると避難所内で使用機器を制限するルールと屋内でシステム的に電流値を制御する機能が必要になります。
昨日まで大阪モーターショーにこの屋内制御機能を内蔵した「安心給電キット」を出展し、各メーカーの方々と車の防災活用について情報交換してきました。
現時点で車からの給電に課題があると認識したことは、EV車のマイナス30度級厳寒期下のバッテリー性能低下の課題。地域ブラックアウト下での充電不能問題。EV車から外部給電装置までの専用コードが5m程度しかなく屋内設置ができないのに外部給電装置が防水仕様になっていない。リセット装置が給電装置内にあり雨の中で蓋を開けてのリセットが困難などの課題。ハイブリッド車系では給電モードやリセット機能の操作が複雑で防災協定やレンタカーなどで非常時に初めてその車を使う人には使いこなすのが難しいこと。過電流が続いた場合の電圧低下により派生する問題。
停電時に開けられない電動シャッター車庫内での排気ガス事故への注意喚起など多くの課題がメーカーの方々と共有されました。
また車の防災活用を想定していない時代の規制としてアイドリングストップ条例や盗難防止に関する交通規則の特例化が必要です。
なにより「電動車」活用やモーターショーの目的の範疇にない、現状大半を占める既存のガソリン車・軽自動車何千万台のユーザーに対して「車を発電機車として活用できる」ことへの国家的、自動車業界挙げての周知広報がされていません。インバーターとコードという僅かな防災投資でインバーター容量100ワット程度でも長時間サバイバル電源が取れるということは、車社会日本ならではの自助による国家防災危機管理、国土強靭化策と言えます。