寄稿記事 ARTICLE

あかりみらい通信

2022年11月01日

前例のない思い切った対策

今年に入り何度か電気料金の高騰についてメール配信して参りましたが、昨日やっと岸田総理が「前例のない思い切った対策」を打つと表明しました。

この件は評論家の小川榮太郎さんに託していたガソリン元請け3社に補填してガソリン価格を抑える制度のように、電力10社に上限を超えた部分を国が補填して電気料金を統制するべしという提言案を西村経済産業大臣、岸田総理に伝えていただいたことがきっかけと聞いています。

北海道からの提言が届いたことに驚きを覚えるとともに政治も捨てたものじゃないなとほのかな希望も持てました。

 

昨夜、急遽書き上げた今月発売の雑誌への寄稿原稿をお送りします。

 

 政治決断とメディアの品格

 ー国葬と前例のない思い切った電気料金対策ー

 

どうやらなんとか間に合ったようである。本寄稿の最終締切日前日929日の夕方、岸田総理大臣が高騰する電気料金に「前例のない思い切った対策」を打ち出すと発表した。10月末にとりまとめ2022年度第二次補正予算案を臨時国会に提出する予定だが、燃料費調整制度の上限を超え青天井となってしまった電気料金に対して政府が「前例のない思い切った対策」を打ち出すことで国民生活、社会経済を救済するという目出度い発表である。

 

来年の春に予想される大幅な電気料金値上げを防ぐことを目的とすると発表しているが、実はもうすでに致命的に値上がりしていて経済に大きな影響を与えている。事務所や店舗、学校や病院に適用される電力種別の業務用電力で試算してみると、東日本大震災の前年の2010年に比べると、今2022年の10月の燃料費調整単価を加えた北海道電力の電力量料金単価は2.7倍にもなっている。コロナで蓄えをなくし売り上げも増えない中での電気料金の急激な高騰の負担は経済対策の最も重要な案件である。

電気料金はあらゆる産業あらゆるサービスに転嫁され、特にギリギリのコスト削減に取り組んでいる製造業にとってはすでに会社存続を脅かすコストアップ要因になってしまい、原料、部品の値上げや空前の円安も含め経営は危機を迎えている。水産冷凍業も食品加工業も酪農業も観光業も飲食業も既に十分追い詰められている。北海道はこれから冬を迎え暖房使用でも電気料金負担がもっとも高まる時期である。今年の夏、東京では熱中症対策が叫ばれる中でクーラーの電気代が払えなくて熱中症で死亡した人がいたという。

今回の「前例のない思い切った対策」も制度設計と議論を経て実行にはまだ時間がかかるだろう。道も自治体もエネルギーの補正予算に加えて、それまでの間の中小企業対策、経済弱者・高齢者対策をとらなくてはならない。特に3ケ月滞納で電気を切るという電気料金制度の送電停止の仕組みは、今回これだけの電気料金の暴騰があった中で生活困窮者の命を脅かすことにもなるので「思い切った前例のない救済措置」を取るべきである。

 

1970年代のオイルショックは第4次中東戦争を契機に勃発した。今回の電気料金を始めとするエネルギーショックはロシアのウクライナ侵攻を契機にしており、まだその終息撤退は予想されない。これは国民のせいではなく企業のせいでもなく日本政府の起こしたものでもない。当然国が国家の経済危機管理として全面的に思い切ってその非常時対策を取るべきものである。

 

 電気料金制度の抜本的改革を

 

ただし、昨年から電力自由化のスポット市場が暴騰し電力自由化市場が破綻しているにもかかわらず何の対策も取らなかった政府の対応の遅れは厳しく非難されても良い。1990年代に橋本内閣からスタートした電気料金値下げのための電力自由化政策は既に破綻してしまいいまや機能していない。数百社が参入していた電力自由化の新電力会社のほとんどが倒産したか撤退したか一部低圧種別でのみ契約を続けている。大手の新電力は今年になって次々と契約更改が不可能であることを通知し、北海道電力は高圧の新規契約を拒み、最低保障約款でさらに1.2倍高い電気代を払わざるを得ない多くの企業や自治体がいる。

 

電力10社はついに燃料費調整制度の上限を廃止するという最後の手段を発表してしまった。電力自由化制度だけでなく、自ら決めてお客さまに約束した「上限」を一方的に自ら廃止するという電気事業本体のルールすら崩壊してしまった。

20年間かけて競争原理で下げ続けてきた電気料金があっという間にそれをはるかに上回る値上げの津波に洗われてしまったのである。非常事態に向けた緊急の「前例のない思い切った対策」を取るだけではなく抜本的な電気料金制度を再構築しなくてはならない。

 

 いまここにある危機

 

本誌9月号に寄稿させてもらった故安倍総理の昼食会でお伝えしようと用意していた提言がやっと岸田総理の耳に達したようである。先日の故安倍総理の国葬は荘厳で故人の功績を忍ぶ大変立派な葬儀であった。88ヶ月に及ぶ国難の時代を今の繁栄まで回復させ、中国の尖閣問題、台湾問題、北朝鮮の日本国民の拉致誘拐、ミサイル恫喝にも毅然と対応し、北方領土問題ではプーチン大統領と27回も対談を行い北方領土問題を解決しようと努力していただいた。

 

今平和ボケした目を覚まして冷静に観ると、根室から3.7kmしか離れていないロシアが実効支配している島々を眺めたときに、この恐ろしい軍事基地化された島々が地勢的には日本の喉元に突きつけられたナイフであり額に押し付けられた熱い銃口であることは間違いない。プーチンはロシアの兵士を1人も損耗することなく戦車で侵攻しなくても北海道を焦土とすることができるのである。先月政府が防衛予算要求した500kmの射程のミサイルは当然ロシアも持っているだろう。北方四島のロシア基地から発射されたミサイルは自衛隊千歳基地を無力化し、北海道庁と札幌市役所を機能不全とし、泊発電所を精密射撃できるだろう。運転停止中とはいえその燃料プールには福島原発事故の比ではない千数百本の使用済み燃料棒が保管されている。ウクライナのザポリジニ原発で今も綱渡りしているヨーロッパ全域を汚染するこれ以上の危機はないチャイナシンドロームの危機が既に北海道のここにもあるのである。500kmの彼方からのミサイルで燃料プールの電源となる送電線と非常用発電機が破壊されるか燃料棒プール自体の冷却ポンプかパイプが破壊されプールの底が抜けると30年分の使用済み燃料棒のメルトダウンが始まるのである。間違いなく北海道と東日本は人が住めない土地になるはずである。

 

 政治家の役割

 

これをお伝えするはずだった安倍総理はもういない。今回の電気料金対策や北方領土の軍事基地の脅威については安倍総理のブレーンだった評論家の小川榮太郎さんから政府中枢に伝えていただいた。小川氏は岸田総理に国葬を決断させた男として某週刊誌でクローズアップされているが、これは信念に基づいた立派な仕事である。無私の心で国を憂い、批判も覚悟して政府に提言していく立派な役割を果たしていただいている。一方では先日の国葬で悲しみに浸っている遺族や弔問者のすぐそばで鉦や太鼓を鳴らしながら故人を呼び捨てにし叫び廻る卑劣で下劣な人間たちがいた。日本の文化では葬儀や結婚式の場にカチこみをかける事は暴力団でもしない。どこの国の人間だろう。故人が目指していた美しい国の姿はここにはない。

メディアもインターネットも含め現在の政治、宗教、思想の表現は品格も誇りもない常識もルールも失った醜い世界となってしまっている。これをメディアの劣化と見るか他国の情報テロと見るか。世界中の国がウイズウイルスに政策転換している中で、マスクを外せない日本にしてしまった政治家と官僚の無責任体質と利権体質を改め、正しい分析と揺るがない判断を政治に期待したい。