寄稿記事 ARTICLE

あかりみらい通信

2022年01月16日

津波注意報

あかりみらい通信

年末に日本海溝・千島海溝大地震の津波シミュレーションについて「出来ることを今すぐ検討するべき」ことをお伝えしました。

これほどのショッキングな発表にも関わらずその対策もスケジュールもレポートされてなかったため、15日に片山さつき議員事務所でこの件を担当する内閣府危機管理室3名から聞き取りを行いました。

この被害想定最大クラスでの注意を喚起するための発表は、北海道からは鈴木知事、釧路蛯名市長、道経連、北見赤十字大根本教授もワーキングメンバーに参加し、発表前には首長あて説明会も行っていたそうで、3月には最終取りまとめの後、各地での調査、対策検討が始まるそうです。

いま南海トラフ地震対策のかさ上げに伴う特措法改正が議連で議論されており、日本海溝・千島海溝地震も同様の措置が可能にという陳情を受けて検討しているそうです。当然、津波浸水想定とその具体的対策は各地の地形と事情を元に想定されるもので、昨年7月に道で策定した被害想定を元に自治体での対策議論もなされているそうです。当然、国と組んでの横展開もあり、地域ごとのモデル事業としての独自の取り組みもあり得ます。

最悪の想定で一遍に13万人が死ぬのですから寒さ対策や低体温の課題も真剣に急いで考えるべきです。

 

この情報を今年第2号のあかりみらい通信に書く準備をしていたところ昨日、誰も想像していない8000キロ離れたトンガの火山が大噴火したことによる津波が北海道まで届きました。

岩手823万人に避難指示。どこかの予想では3メートルの津波。まだ起きている時間で、早くに警報が出たのと停電がなかったのでそれなりに

避難もできました。

千島海溝地震による30メートルの津波が昨日の暴風雪の最中だったら避難できたでしょうか、マグニチュード9ならば当然ブラックアウトを前提に考えなくてはなりません。オミクロンならばもう避難所でコロナに感染してもしょうがないと割り切る必要もあるかもしれません。

 

 

[某紙への寄稿案です。ご参考になれば]

 

昨年1221日に政府より日本海溝千島海溝大地震のシミュレーションが発表された。30年以内に40%の確率で北海道で最悪13万人が亡くなるというおそろしい想定である。北海道にいまある危機管理のシミュレーションとしては、最大最悪のものでは無いのだろうか。20113月の東日本大震災から10年後に出されたこの想定は、決して起こりえないものではなく必ず起きるものである。

新型コロナウィルスが小休止している今、これ以上悩みの種を増やさないで欲しいというのが担当者の本音だろうがそうはいかない。自分の街の住民が千人、万人の単位で間違いなく死んでいくという想定を出されてそれにどう対応していくか眠れなくなるのがリーダーと危機管理官の本来の役割である。

 

筆者は防災危機管理のコンサルタントを自任しており、2000年の有珠山噴火から9.11テロ、北朝鮮ミサイル、胆振東部地震、ブラックアウト、新型コロナウィルスと北海道のいろいろな危機を眺め、研究してきた。あかりみらいという未曾有の電力危機に対応する会社を起業したのは東日本大震災の翌年である。

中でも今、このまま何もしなければ北海道民13万人が必ず亡くなるというならば、まずは何を置いてもこれに応えなくならない。

あまりにも大きな課題に気が遠くなり反応ができなくなっている人たちに、まずできることから動き出すことを強く提言したい。自分の街の過半が水没するとしたならば、自分の家族と隣人と友人が津波にのまれて死んでしまう、故郷が壊滅すると想像したならば、今何をやるべきか。

津波が来たときに避難するために何が必要か。30メートルの津波が来ても倒れない避難タワーを避難人数分の大きさで作る。高台に避難場を作り、病院や役場、介護施設も移設する。警察署や消防署も水没しては機能を果たせない。

津波が来るまでの数十分が住民の命を左右する。猛吹雪の夜中に住民全員に目を覚まさせる警報はどうやって流せばいいのか。地震と同時にブラックアウトしてしまったときに非常用電源が稼働しないと警報は鳴らせない。携帯電話が命綱なのだから電話基地の耐震化と電源確保が必ず必要になる。高台への避難道路は拡幅して常にロードヒーティングで路面を出しておきたい。

そんなお金がどこにあるのか。多分ある。幸いにも私たちはいま比較するものを持っている。18千人が亡くなった新型コロナウィルス対策に何兆円の国費が使われてきたか。今重症化しないと言われているオミクロン株に一体いくらの予算がついているか。これに比して、政府は13万人の確実に亡くなる命を救うためにいくらの規模の予算をつけることができるのか。

北海道の太平洋側に30メートルの高さのスーパー堤防を作ることは現実的ではない。では前述の避難タワーや主要施設の高台移転にいくらかかるのか。住民の避難所建設、移住も考えなくてはならない。本当に町の半分の命が失われる前提で最低限必要なものを全て積み上げるといくらになるのか。

 

最初の発表から今までこの対策予算は検討されてきたのか。歴代の危機管理課、議会、首長はどういう手だてを尽くしてきたのか。

室蘭、登別、白老、苫小牧、厚真、むかわ、日高、新冠、新ひだか、浦河、様似、えりも、広尾、太樹、豊頃、浦幌、白糠、釧路市、釧路町、厚岸、浜中、根室。今年この22の被災地が200億円ずつの緊急対策を行ったとしても5000億円に至らない。

まずは被災シミュレーションに対しての対策を立案しよう。

自分の土地の事は自分たちでないとわからない。急いで真剣に勉強しよう。福島に行けば必ず何が必要かがわかる。共通の恐ろしい課題に情報を集め対策を整理しよう。危機管理にやりすぎや遠慮は無用。よその研究結果を丸ごといただこう。

 

 

この稿を見て同感してくれる方々は214()14時に札幌商工会議所で開く「防災危機管理フォーラム勉強会」に参加してください。13万人の命を救うための地元の首長、防災危機管理担当者、議員、消防、自衛隊、警察、病院、住民が集まって今必要な事とその手立てを考えましょう。国会議員はその手立てをどうやって実現するのか予算化と法案の整備を考えてください。やるべきことが見えたら政府への提言、陳情とやるべき事は山ほどあります。

新型コロナウィルスの時には繰り返し国家非常事態宣言が出されました。今、南海トラフ地震も日本海溝・千島海溝地震も必ず起こることが予告されている天災です。明日、来月、来年13万人が亡くなる可能性にいま大きな声と予算と労力を費やすべきである。

 

最後に、まだ誰も言い出していないようなので、極めて現実的な提言を。

「政府は19万人分の救命胴衣をハザードマップ対象の住人にいますぐ配るべきである。」

ビーコンと非常食、飲料を内蔵した救命胴衣とヘルメットを全家庭に人数分配るだけで、確実に犠牲者は減り、住民は安心する。

政府の金を使わなくても自分たちの命は自分たちで救うことができる。

どちらかの自治体で、この救命胴衣の着衣実験を行うプールの協力をお願いできないでしょうか。