寄稿記事 ARTICLE

あかりみらい通信

2023年04月12日

電気料金の真実①

あかりみらい通信

エネルギーコンサルタント/(株)あかりみらい代表取締役の越智文雄です。


新年度の人事異動も済み、統一地方選挙前半の結果も出たところで令和5年度の喫緊の課題に目を向けましょう。

今あらゆる方にとって目の前にある最大の経営課題は異常な電気料金高騰への対策です。ロシアのウクライナ侵略で国際エネルギー価格は高騰を続け70年代オイルショックを超える国家的経済非常事態になっています。日本でも電気料金が昨年来燃料費調整契約制度の上限をはるかに超えてしまい、各電力会社は抜本的な本格料金改定を申請しています。

メディアはこれから値上がりするかのような報道ですが、実は既に昨年1年で東日本大震災前の3倍近くのレベルになる電気料金値上げが行われており、今回の値上げ申請はさらにその3割近い値上げを予告しているものです。添付の電気料金の推移グラフをご覧ください。

この電気料金の非常事態はすべての家計、経営、生産、サービスに関わり、これからあらゆる分野で電気料金値上げの価格転嫁の嵐が吹き荒れさらなる物価上昇をもたらします。価格転嫁ができない経営者にはすでに経営の危機が訪れています。

自治体の方は昨年12月議会で令和4年度予算の補正で苦労されましたが、今令和5年度予算が成立してもまたすぐに大幅な補正が必要になるはずです。本来ならば福祉や教育に使われるべき貴重な税金が電力会社の石炭燃料となって燃やされています。

電気料金の改定は2011年の東日本大震災時の大規模値上げを超えるもので、この経済的な激震は中小企業や製造業にとって命取りになるところも出てきています。皆様の家計にも一家庭月万円数万円という負担がかかってきますが、今回は連載で日本の経済、経営、産業、行政負担という面から電気料金制度の基本の仕組みをお伝えします。


■電気料金制度の仕組み

電気は全く同じ品質の商品をお客によって違う値段をつけるという極めて特殊なビジネスモデルを持っています。1キロワットアワーの電気を家庭用には50円、事務所やホテルには40円、工場には20円、鉄鋼や紙パの大口産業用には10円といったように使用量の大きさや電圧、ロードカーブによって電力会社が理屈をつけながら電気料金を決めています。

総括原価主義というほとんど電気料金とNHK聴取料以外ではありえない便利な理屈で、かかった全ての費用に利益を乗せて全需要家から徴収します。これを経済産業省が審査、査定して認可するのですが、一方で電力自由化という今となっては破綻している競争制度の中で、許認可とは関係のない相対取引で料金を決める仕組みができあがっています。本来は電力会社同士に競争させて値下げさせる仕組みが、実質独占状態に戻ってしまい、許認可なしに自由に価格を決めることができる事態になってしまっています。いやなら他所と契約しろと言われても既に競争相手は退場してしまっています。相対取引で守秘義務付き契約としてその価格は公開されません。通常高圧電力はほとんど標準単価以下の価格が提示されているはずですが、競争がなくなった今どういう価格になってしまっているでしょう。4月分の電気料金請求書でその基本料金と電力量料金単価を確認してください。昨年の5割増、10年前の倍から3倍にもなっているはずです。

資源のない島国で燃料を輸入に頼るしかない日本の電気料金が世界で最も高くなるのは宿命です。その発電コストを少しでも下げるために原子力発電が開発され効果を上げてきましたが、東日本大震災で目の当たりにした巨大リスクにより再稼働ができないでいる状況です。再稼働できない原子力発電所に関わる膨大な人件費、修繕費、維持費が基本料金に織り込まれています。広報費まで折り込むのはやり過ぎですね。

わずかなウェートの水力、地熱、太陽光、風力、バイオマスなどの電源をかき集めても石炭、天然ガスの火力発電に匹敵する発電方法はありません。この石炭、ガスが何倍にも値上がりしているのですから当然電気料金は何倍にもなります。


■基本料金と電力量料金

今回の値上げで問題視すべき事のひとつは燃料費が値上がりしていることへの非常事態対策だったはずが、いつのまにか電力会社の経営改善のための本格値上げとすり替えられてしまったことです。

平成8年から燃料費が値上がりした分は燃料費調整契約制度という仕組みで自動的に値上げすることになっていました。ロシアがウクライナから撤退し国際エネルギー価格が下がった場合には自動的に電気料金も下がるはずの仕組みでした。昨年8月に燃料費調整契約制度単価の昔決めた1.5倍という上限を超えたことで、本来はそれ以上の値上がり分は電力会社が負担するはずでした。自分で決めた上限を自分で撤廃するというのもおかしな話ですが、燃料費が異常に上がったから電力会社では負担しきれないので燃料費調整単価の上限を撤廃するというならわかりますが、どさくさ紛れにあらゆる費用を洗いざらい乗せて本格値上げにしてしまうという包括原価主義そのもののすり替えがいま行われています。日本中の企業、自治体、家庭が苦しんでいます。値上げできない企業が経営危機にあります。それでもすべての物価を押し上げる全面改訂値上げが必要なのでしょうか。

本当は燃料費調整制度の上限単価を改定するだけでよかったのです。値上げ申請も電力量料金単価のみの値上げが本来の目的であり基本料金まで値上げする理由はありません。現に基本料金には手を付けていない電力会社もあります。全国の値上げ申請の比較をグラフ化してみたのでご覧ください。


電力量料金単価だけならばわかりやすいのですが基本料金の大幅値上げがあるとトータルの負担増が分かりづらくなります。そのためモデル試算として契約kWと想定使用量でシュミレーションしたのが、添付グラフです。電力料料金単価がkWh当たり40円だとしてもこれに基本料金kW当たり2,000円の負担を加えると実質1kWh当たり70円になるという評価です。みなさんの電気料金請求書の総額を使用電力量で割り返して出た数字が総合単価です。これを1年前の数字と比較してみてください。

さて、自分の会社、自分の自治体の電気料金負担がどれほどのものになっているか、これからどこまで経営が圧迫されていくことになるか想像できたところで、この電気料金の非常事態とも言える対策をどうすれば良いか次号で考えましょう。

電気料金の削減対策はそのままカーボンニュートラルのCO2削減対策です。

次号ご期待ください。


PS. ご参考にオキナワグラフの今月号に掲載された記事をご覧ください。

▶オキナワグラフ2023年4月号