寄稿記事 ARTICLE

あかりみらい通信

2023年04月28日

電気料金の真実③

あかりみらい通信

エネルギーコンサルタント/㈱あかりみらい 代表取締役の越智です。

4月15日、16日に札幌市でG7環境大臣会合が開かれ北海道札幌宣言が発表されました。記念事業として札幌ドームでの環境総合イベントも行われ5万人を超える盛況でした。弊社も全国LED化の完全実施に向けたメッセージブースを設け、北海道知事、札幌市長、環境副大臣、経産副大臣ほかの来場をいただきました。


■電気料金非常事態と価格転嫁の危機

本メールマガジンでも何度か書きましたが、電気料金はすでに非常事態になっています。弊社が入居している事務所ビルでも新年度4月分の共益費として電気料金が基本料金で3割増し、電力量料金ではなんと8割増の請求が来ています。これを非常事態と言わず何と言いましょう。高圧業務用の契約で基本料金が1870円/kWから2,547.6円/kWの36%の値上げ。電力量料金は18.45円/kWhから33.24円/kWhの80%の値上げ。プーチンが戦術核でも使ったらこれにさらに燃料費調整単価が大きく乗ってきます。


全国の電気料金比較

▶各電力会社申請料金表(高圧業務用・産業用)

▶全国電力量料金比較

▶全国基本料金単価比較

▶全国電気料金総合単価試算比較



物価高で経営不振となっても借金もできない会社が世の中にあふれています。それに比べて、そもそも電力自由化が崩壊し再び独占状態になり競争による割引ではなく定価で払うお客さまがどんどん戻ってきて売上が上がっているはずの電力会社がなぜ赤字になるのか。一時的に赤字になっても、いくらでも金融機関から借りることで経営を保つことができる大企業が総括原価をそのまま需要家に転嫁してよいものか。燃料費の上がった分だけを電力量料金に転嫁するのは納得しますが、「我々電力会社も経営が苦しいのだ」と基本料金を上げる理由がわかりません。これがきっかけとなり、必ず全国に価格転嫁の物価高が起こり、倒産企業が出てきます。


ロシアのウクライナ侵略以前と比べてすでに2倍から3倍になっている電気料金の価格転嫁による異次元の物価高がこれから社会経済に大きな影響をもたらします。これがいつまで続くのか。上限を超えた燃料費調整単価が国際情勢で再びどこまで上がるのか想像はつきません。

本来ならば政府がこれからの値上がり分を全て負担するような根本的な政策が必要です。今回の電力会社の値上げ分は燃料費調整の分だけ電力量料金を値上げすれば良い非常時の臨時的措置だったはずなのに、いつのまにか電力業界の経営改善のための本格値上げになってしまいました。零細企業の経営や生活困窮者の家計がどれほど厳しいものになっていくか、政府も電力会社も想像していません。

今回の全国の電気料金値上げの申請額を1年間の電力コストと考えたときに値上げ分は所詮数兆円です。家庭や企業や自治体が負担しようが、政府が負担しようが、数兆円の電気料金が火力発電所の石炭の燃料代として燃えていきます。政府が新型コロナ対策で予算化した100兆円を超える税金と比較して、プーチンがウクライナから撤退するまでの国家非常時の臨時措置として価格転嫁よる社会混乱が起きないように値上げ分全額を政府が負担する制度設計をするべきです。


■自分たちでできる対策を

政府に対策が求められるのは当然ですが、まずは自分たちでできる自衛策を取らなくてはなりません。

残念ながら、2008年の北海道洞爺湖サミットの開催地である北海道でも、今回G7環境大臣会合が開催された札幌市でもLED化の進捗は半分にも満たず札幌市で900施設、北海道庁では2000施設がまだ手をつけられていないそうです。

私たちの税金が本来7割安くできるはずなのに無駄な電気代に費やされ、10数年も放置され続けています。政府は「2030年の政府施設100% LED化」を行動計画として決定していますが、その具体的な工程や予算を統括する組織もないのが現状です。

G7イベント会場での立ち話でしたが、中谷経産副大臣にはその全国的なLED化が進むことにより起きるサプライチェーン問題と昨年改正された大気汚染防止法の強化により格段と難しくなったアスベスト含有天井工事の規制問題についてメッセージしました。

サプライチェーン問題は既に深刻な様相を呈しており、LEDについても価格の上昇と品不足が続いています。これで目出度く政府のカーボンニュートラル政策が加速し全国の国営施設が本格的にLED化を始めるとあっという間に全国からLED資材は蒸発すると想定します。コロナ後の建設好況により電気工事業も繁忙しはじめており、LED化の予算化ができても工事に着手できない事態や納期が遅れる事態も起きはじめています。

民間企業であれば今すぐに電気工事屋に発注すれば済むことですが、自治体においては役所ならではの体質と仕組みで全施設を短期間にLED化する事は現状では困難です。数十数百もの公共施設をいままでの公共事業施設改修方式として一括発注することは予算的にも職員のマンパワーとしてもできません。縦割り組織の中で施設改修を担う建築担当課が数十数百の見積もりを行うだけで1年以上の作業が必要になります。

この解決策は以下をご覧ください。

▶ジチタイワークス Vol.25


統一地方選挙で首長選挙があった自治体はすでに骨格予算から新政策予算への補正作業に入っていると思いますが、ぜひ喫緊のカーボンニュートラル対策と電気料金対策として自治体所有の全施設の完全LED化を予算化してください。


■北海道カーボンニュートラルフォーラム2023開催

G7環境大臣会合開催を契機にカーボンニュートラルと電気料金問題を考えるフォーラムを開催します。6月5日13時から札幌商工会議所大会議室において会場定員200名とテレビ会議システムにおける全国オンライン参加で開催します。詳しくは下のURLからお申し込みください。

▶北海道カーボンニュートラルフォーラム2023詳細