寄稿記事 ARTICLE
2023年07月20日
9月議会に間に合うように
■防災資材の寄贈
先週は山口県長門市の全市LED化プロポーザル入札に参加し落札いただきました。LED化レクチャーに訪問した島根県では中国地方を襲った線上降水帯にぶち当たり水害の恐ろしさを目の当たりにしました。
前号の防災資材寄贈のメッセージは防災セクションにも回覧いただけたでしょうか。東北地方でも水害被害が著しかったようですが、床上冠水の復旧作業での消毒と消臭用に次亜塩素酸水パウダーと霧化器を寄贈しますのでご遠慮なくお問い合わせください。
https://akarimirai.com/municipality/corona/
■9月議会に間に合うように
さて、防災アドバイザーとして9月の防災訓練の相談も受けていますが、それより先に9月議会の議案エントリーの締切が迫っています。全国の地域や町村によって違っていますが、早いところでは7月末には議案提出を締め切る自治体もあるようです。
毎回みなさまに訴えていますが、いま一番先に議会に諮からなくてはならないことは電気料金高騰対策です。先週政府広報で全国地方紙まで全面広告で「電気代の値上げが気になるあなたへ! (規制料金は)政府の負担軽減策などによりウクライナ侵略前を下回る料金水準に抑えられています」という能天気な広告が打たれています。経産省自己満足のためだけの何億円もの税金無駄遣い。
日本はまだロシアとサハリン2のLNGを長期契約で調達しているそうです。これは重大なカントリーリスクなので、総理も中東で代替エネルギー確保に動いたようですが、ヨーロッパ各国ではすでに脱ロシア燃料を進めています。能天気な広告だと思いませんか。
いま全国的な猛暑に政府は就寝時にもクーラーを稼働させる広報をしています。来月の請求額を見て目を剥く家庭も多いはずです。
4月から驚くべき値上げとなった高圧業務用、産業用の電気料金はすでに4、5、6月の自治体予算を侵食し、本来ならば教育、福祉、介護に充てるはずの予算も圧迫しています。ひと月経るごとに市民の税金が電力会社の石炭代として燃やされています。
おかげさまで(電力会社への皮肉です)この問題意識を持つ市町村から5月、6月だけで50以上のオンライン勉強会とLED化試算依頼がありました。自治体ワークスの記事を見て春先に相談のあった山口県長門市では6月議会で慎重派の議員の反発に苦労しながらも先週入札まで漕ぎ着けました。今回第一弾の30施設の試算では、工事費1億2千万円、電気料金削減額年間3200万円。125%値上げした中国電力の新料金では値上げした分投資回収年数も短くなり、投資回収年3.6年で、LED化リース費用を除いても年間3200万円の財政メリットと420トンのCO2削減が生まれます。教育委員会からは8月の夏休み中に全ての学校をLED化して欲しいとの要望があり、地元電気工事店とスケジューリングしています。
文字通り時は金なりです。12月議会で来年度の予算を組み立ててなどと言っている場合ではありません。値上がりした電気料金を再び補正予算で賄うよりも、いますぐできる電気料金削減策を準備すべきです。
自治体が払う電気代は市民の税金です。のんびりしている場合ではありません。長門市の30施設のケースでは1か月早く工事を終わらせることで月270万円の電気料金負担が浮きます。市内電気工事業界の総力で30施設を年内に終わらせて、早々に次のグループに取り組みます。
みなさんの自治体でもいまから試算して分析しても間に合うので、ぜひ9月議会にエントリーしてください。
とくにすでに試算が終わっている自治体は最新の入札要綱例と仕様書例を情報提供しますので、すぐに入札準備に入ってください。
■入札準備での注意点
全国で次々と一括LED化の入札が始まっている中で、一部のリース会社と照明メーカーが利益誘導のウソの情報で入札参加条件と仕様に不適切な項目を紛れ込ませる例が見受けられます。公正な条件でベストなコンソーシァムを選別するための大事な選定作業ですからしっかり勉強し、専門家の意見を反映させてください。
①公共型番製品を持った会社の製品に制限している例
← 合理性のない恣意的な制限であり公正な競争を妨げるものです。公共型番製品を仕様書で指定するならともかく、公共型番製品を登録していることをその会社の評価とするのは誤りです。海外製品をオミットするために設けたならば逆に自由競争の流れの中で海外メーカーから訴えられます。管交換の管はG13国際規格でどこのメーカー製品でも設置可能で型番登録する必要がないので公共型番に登録されていません。より安く省エネ効果が高い品質の良いものを選定するのが仕様書なのでこれは撤回すべきです。
日進月歩の多様なLED製品からコストパフォーマンス、省エネ性能から最善のものを選ぶという点では、照明メーカーを特定することを入札条件にしない自治体も出てきています。これは正しい判断です。
② 安定器を外すことを条件にしている誤り
← 全く意味のない不合理な制限ですが、中部・関西の自治体ではこういう間違った情報に惑わされているところもあるようです。安定器は電気的にカットしますが、タップ溶接されている安定器を無理やり外すのは不必要な工事です。理屈として安定器をバイパスさせた証拠に安定器を外させるなどはナンセンスの極みであり、現在の蛍光管タイプは安定器を通したままでは点灯しません。点灯確認すれば安定器はバイパスしています。
これは、なにがなんでも一体型器具への交換を進めたい一部業界が「蛍光管型は火が出る」と悪質な風評を流したチラシを自治体建築部門や電気工事店に配っており、この裏面でも非科学的なフェイク攻撃をしています。これは一昔にレトロタイプという安定器をそのままに交換する機種が流行ったときに全国で26件の煙がでる事故があったことをあたかも管交換は危ないと印象操作しているものです。安定器を切断してあって火がでるわけがありません。このチラシの誤りについては経産省も認めており、いま環境省、経産省両省副大臣に指摘しチラシの撤回を要請しています。
熟練した電工でも3倍の時間がかかる必要のない工事でいたずらに工期を伸ばし、廃棄物を増やし、市民の税金を無駄使いするような意味のない条件は付けるべきではありません。
PCB含有の確認のためもあると理屈づける自治体もありましたが、全く次元の異なる理由であり、いままでの市のPCB調査と処理を全否定することになってしまいます。これを追求すると安定器ごと器具ごと外して廃棄してしまう器具交換方式こそ危ない工法で廃棄前に全数PCB確認を条件にしなくてはならなくなります。
③ アスベスト含有建材の工事を想定していない
← 先月、環境省地球温暖化対策室と大気汚染防止室と一緒にLED天井工事がアスベスト規制強化の対象になるか確認してきました。答えは天井材を切り取り、研磨しなければ規制対象外だが、サイズが合わずに切削する場合は対象ということ。当たり前の解明ですが、管球交換はOK。スッポリ同じサイズの器具交換もOK。ただし天井裏のグラスウールが露出し現場に舞うような工事や屋根裏に潜ってアスベスト吹きつけ塗装に接触するような工事は対象の可能性。調査対象になるかどうかの判断は地方自治体の環境セクションが行うとのこと。いままでお付き合いしている環境担当はみなさんほぼ安全面を優先した判定をしています。
ちなみにアスベスト含有調査の費用や養生対策費など予算が1.5倍から2倍にもなります。
ここに目をつぶってアスベスト調査費用は後で考えるなどという無責任な要項を作ってはいけません。
そもそも地方ではアスベスト施工資格を持った電工が少ないため、工事が成り立ったとしても工期が非常に長くなります。工期が伸びただけ完工までの電気料金も無駄になります。
器具交換の場合にアスベスト工事が必要となるかどうかは、メーカー型式、サイズまで見ないと取り付けに切削が不要かどうか判断できません。全メーカーが同一サイズではなく統一規格もありません。何万灯の器具全てを年式、メーカー、型番で事前調査するのは不可能であり、生産終了機種もあるので、一社メーカーで統一しようとすると2006年以前の建物は必ずアスベスト調査対象になります。
つまり全数調査費用と調査結果に応じた見積もり、工事期間を覚悟しないと器具交換の見積もり金額も出せずに予算も付けられないのです。本来はこの問題への対策こそがプロポーザル企画競争入札の肝でもあります。
いまではこの現実を重視して管交換を条件とする自治体が増えています。
バランスを欠く判断で、一体型を進めたいばかりに間違った仕様で公募をかけると禍根を残すのではないかと心配しています。
アスベスト、PCB、安定器の廃棄については環境セクション、建築セクションにも確認してみてください。
■オンライン勉強会のご案内
7月、8月は以下の日程で電気料金問題、カーボンニュートラル対策、LED化、空調制御など新技術の勉強会を行います。先行自治体の成功例なども情報提供しますので、ぜひ参加してください。
オンラインセミナーのご案内