寄稿記事 ARTICLE

あかりみらい通信

2024年11月12日

全く足りない!

あかりみらい通信

■都道府県はどうする
12月議会のエントリー締め切りも迫ったこの頃になって、県や政令市からのお問い合わせも増えてきました。今すぐ照明配置図面をスマホで撮影して送ってもらえれば、AI図形認証プログラムを使って1週間後くらいには試算と参考見積もりをお送りしますと伝えています。

予算化ができて、議会を通して、プロポ入札を行って、すぐに工事に取り組めば町村レベルであれば年度内にも終わらせることができます。数百の公共施設を持つ市であっても2025年度中には完了させるスケジュール感でアドバイスしています。県の場合でも試算、予算化までは年内にできるかもしれません。

■資材が間に合わない
ところが、ここに皆さんが想像もしていなかった事態が待っています。LED資材の供給が全く間に合わないという現実です。
先週のオンラインセミナーに参加した九州のある県では、施設数はおよそ5000件だそうです。施設の大小によりますが、私どもの過去数千件の試算結果からは、大雑把に100施設で50,000本から100,000本のLED照明が必要になります。1つの県で5000施設、250万から500万本。これが47都道府県で1億2千万から2億5千万本。東京都や大阪府の施設数は想像できません。そのうえ来年度になると1700の市町村が一斉に入札発注を始めます。(12月予算化に間に合えば良いのですが)政府施設と民間を合わせると10億灯に近い数字になるのではないのでしょうか?日本中で誰もこの試算をした人はいません。

政府も日本照明工業会も総量調査もシミュレーションもしないまま昨年11月の国際条約で2027年の蛍光管製造禁止を決めてしまいました。10年間あれば間に合うのかもしれませんが、あと2年半です。パナソニックは2027年9月での製造終了を発表しています。勝手に半年縮めてしまいました。
間に合うわけがありません。
1,000,000本単位でLEDを調達するのは国際貿易の世界です。電材問屋を通して、地元の電気工事店が調達できる範囲ではありません。

政府の仕事です。今年6月には高市経済安全保障大臣と斉藤経産大臣に提言書を渡していましたが、内閣改造で再び永田町に向かわねばなりません。首長の皆様も知事会、市町村会などで政府要望を行ってください。国会議員の皆さんも、次の国会では超党派として質疑してください。日本の灯りを護らなくてはなりません。

■最善の選択は
この期に及んでまだ「器具一体型で丸ごと交換」などと無責任な推奨をしている照明メーカーもありますが、世界の標準製品である1198ミリ、G 13口金の蛍光管タイプLED製品ですら世界中で供給不足となるかもしれないのに対して、日本のいくつかのメーカーがガラパゴス発想で作った製品で日本市場を統一しようなどと企業エゴ、利権工作以外の何者でもありません。しかも、パナも三菱も東芝もシャープも日立も各社の器具一体型照明のライトバーのサイズと取り付け方が違うのですから笑止の限りです。汎用性のないものを何千の公共施設にバラバラに取り付けてどうメンテナンスするつもりなのでしょうか。さらに、15年後20年後にライトバーを取り替えるときには、素人ではできないので「電気工事屋を呼んでください」とホームページに書いてあります。蛍光管タイプならば自分で替えられるものを、電気屋さんに一灯あたり何万円支払うことになるのでしょうか?

LED照明の供給量が全く足りません。このことを知らないままで入札しても入札不調になり、残された2年半のうちまた1年を棒に振ります。プロポーザル入札の要項には、資材の調達能力と責任持って完成させる実力と実績を重点的に評価してください。

県や政令指定都市は12月議会以前に、数千件から万件の自分の県施設に供給が間に合うのかどうか、国内のLED照明の生産能力と海外からの輸入実績を経済産業省に確認してください。政府の照明問題の担当課は経産省情報産業課です。彼らは間に合うという見解を変えていませんが、器具一体型丸ごと交換の照明器具の年間供給台数が何千万台あるのか、自治体の供給に間に合うのかどうか確認してください。

≫サンデー毎日 11月10・17日合併号
≫ジチタイワークスVol.34
≫「カギはLED化 エネルギーの将来」