寄稿記事 ARTICLE
2025年01月14日
ガリウム輸出禁止
みなさま
穏やかな正月を過ごしていたところ、昨夜は高知、宮崎で南海トラフの地震津波が発生し、今年も災害に目を覚まされて始まる一年になりました。
さて、年末は社会経済にとって非常に大きなニュースがほとんど注目されず小さく扱われていました。
みなさんご存じでしょうか。
12月2日に米国は中国に対して半導体技術の輸出規制を行い、3日にはそれに対抗して中国は米国へのガリウム他稀少資源の輸出禁止を発表しました。国内では12月17日に原子力の再稼働をシナリオとする「第7次エネルギー基本計画案」が発表されました。年末ギリギリの12月24日には、一昨年11月に締約された「水銀に関する水俣条約」の施行に関する政令が閣議決定されました。
今までもこのメールマガジンでお伝えしていますが、「2027年で蛍光管が製造禁止になる」という行政災害とも言える国難は、中国が独占するガリウムという稀少資源の輸出禁止カードを平気で切ることがはっきりしました。日本とも外交上の対立が起きれば、日本ではLED照明を作ることができなくなります。半導体資源としての重要性の方が優先されるでしょうが、米国がこれまでどれだけ照明のLED化を終わらせているのかも注目されます。147カ国の水俣条約締約国会議で決定した2027年の製造禁止に向けて米国も含めて各国は着々と準備しているはずです。そこに米国の照明メーカーはLED原料を調達できなくなったのですから、国際資源競争、LED争奪戦が激しくなるのは明白です。
一方で日本は照明が何億灯あるのか需給バランスも考えずに、国際会議で多数決で負け越しておきながら丸1年間この問題に何の手も打たず、メディアも注目しない年末ギリギリに閣議決定し、初めて国民に知らせました。なぜ照明が無くなるという極めて重要な事実が1年間も放置され、年末にそっと発表されたのか。これはその1週間前に発表された原子力再稼働をシナリオとするエネルギー基本計画の発表があったからだと思います。
AIの進展によるデータセンターの稼働爆増と半導体工場の電力消費量の激増という数字的根拠を示さない電力危機論で原子力を再稼働させるシナリオですので、ここに照明のLED化で省エネすれば原子力はいらないという議論は邪魔だったのです。
2011年3月の東日本大震災で福島原発が爆発し、日本中の原発が停まり未曾有の電力危機が起きたとき、時の菅政権はすべての照明をLED化すれば原子力がなくても日本経済は復興できると「あかり未来計画」を閣議決定しました。
照明メーカーは2019年に安定器の製造を終了し、後は安定器の寿命が来た順に自然にLEDに変えざるを得ない状況をつくりました。岸田政権では2030年を100%LED化の目標年としてカーボンニュートラル政策を定めました。
ロシアのウクライナ侵略により高騰した電気料金の対策としてもLED化は進みましたが、今、安定器がもう手に入らない中で2027年で蛍光管までが製造終了するという状況を作られてしまっては、LED照明の供給が間に合うか、国の灯りを護れるかが社会経済を左右していきます。
半導体不足、電材、建材の不足、マスク、ワクチン、咳止め、麻酔薬不足、さらには主食の米不足まで起きる日本の脆弱なサプライチェーンにおいては、LED照明資材が全国からの発注で一気に蒸発してしまうことも充分考えられます。さらには中国が発光ダイオードの原料となるガリウムを米国に輸出禁止したわけですから、どう考えても経済安全保障上の緊急事態なのです。
年の初めから危機管理のメールになってしまいましたが、2027年9月のメーカー生産終了まで「まだ2年半あるさ」と考えずに、照明の資材不足と高騰が起こる前に今すぐに手立てを尽くしてください。政府機関や自治体が4月の新年度を迎えると一斉に大量の入札と発注が始まります。テレビコマーシャルで戸惑っていた民間企業は、政府の閣議決定でこの事実を知りました。民間も動き出しています。
≫最後の1本編
≫政府閣議決定
政府はまだ何の対策も取っていません。それをのんびり待っていると値上がりと品不足が目に見えています。この中国発の大津波とも言える非常事態に対応するには一刻も早く避難すること、今すぐにLED化の見積もりをして工事発注することだけが答えなのです。
あかりみらいでは、この解決策をアドバイスするウェブセミナーを毎月2回開催しています。1月は17日と31日。お申込みいただくと招待アカウントをお送りします。
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≫日経トレンディ 2025年1月号
あかりみらいは一般社団法人日本の灯りを護る会の事務局企業としてもお手伝いいたします。ご遠慮なくお問い合わせください。