寄稿記事 ARTICLE
2026年02月05日
豪雪には自衛隊要請を
本日は危機管理がテーマです。
1月25日と26日に降り続いた大雪は全国で大きな影響を与えました。特に札幌では歴史的な1メートルを超える降雪で交通機関は麻痺し新千歳空港では、7000人の搭乗客が空港で夜をあかしました。数が足りないので不公平になるからという理由で配られなかった毛布も当たらずに、硬いコンクリートの床で眠る体験は段ボールベッドのある災害避難所よりも苦痛なものだったでしょう。
■自衛隊の出動要請をすべき
北海道で暮らす以上、冬の雪や寒さに耐えて、楽しんで生きていくしかないのですが、これほど生活や産業を脅かす気候被害は大規模自然災害に他なりません。
大地震や大津波、河川氾濫、洪水、土砂崩れ、巨大台風 と同じように、「大豪雪」とでも新たなジャンルを作って、自衛隊の出動を当然とする法改正なり条例改正を行うべきです。自衛隊の災害派遣については今更議論することもなく、東日本大震災や胆振東部地震、能登半島地震の災害復旧など誠に頭の下がる活躍を見せてくれています。
これほどの実力と使命感を持った巨大組織が、戦争抑止のために日々訓練し待機してくれているのですから、市民の命と生活を守るために除雪と排雪に集中的な災害復旧活動を行ってもらうべきです。なぜ今回はこれを要請しなかったのか。2023年の豪雪の時も同じ議論がされ、再発防止のルールが決まったのではなかったか。
私が北海道電力釧路支店に勤務していた時に道東を爆弾低気圧が襲い、阿寒方面の国道で数十台の自動車が雪中に埋まり親子が排ガスで亡くなった事故がありました。広域に長時間停電した地域では山の上の無線局のバッテリー容量が足りず道東の警察無線通信すべてが止まる寸前まで行きました。積雪で登山が不能で、確かこの時は自衛隊のヘリコプターでバッテリー交換に向かったはずです。
当時、釧路で私の主催する雪祭りイベントにボランティア参加してくれていた自衛隊の幹部は、「あのときには自衛隊は天気予報を見てスタンバイしていて、市長からの要請があればすぐに出動できるよう待っていた」と話してくれました。電話1本かけて自衛隊の出動があれば親子の命は救えたのかもしれません。
報道はされていませんが、今回の札幌の豪雪被害でも、当然緊急搬送車両も立ち往生し急病で苦しむ人たちが長時間治療を受けることができなかったり、中にはお亡くなりになった方もいたかもしれません。国道の除雪は開発局で、道道は、市道は、高速道路は、空港は、JRは、生活道路は、と役割分担の社会システムはありますが、その平時の能力を遥かに超えた自然災害被害に対して、自衛隊という強力な災害対策部隊をシステムとして組み込むべきです。
今回の豪雪被害で最も被害が大きかったのはJRであり、北海道の基幹空港路線である千歳空港から札幌への移動手段が長時間遮断されました。JR北海道は豪雪被害から3日たった29日に至って夜の9時から列車を停止させて路線の排雪復旧を行うという非常体制をとりました。当たり前の考え方として最終便で到着する疲れ切った搭乗者の空港からの帰宅を待ってから夜間作業に入ることがなぜできなかったのか。あと2時間を待つだけの人手がJR北海道に確保できなかったからでしょう。
民間企業の社会責任とは言え、その影響を被るのは市民であり、地域社会であり、全国から北海道へ訪れる何十万人の人たちです。JR北海道が自衛隊に直接依頼する道がないのであれば、知事が北部方面総監に依頼すれば良いし、多分そういうルールも前回確認されていたのではなかったでしょうか。
全国ニュースで流れていますから、当然、小泉進次郎防衛大臣もこれを見ているはずで、北海道の国会議員から小泉大臣へこの地域の悲鳴を伝えていたならば、喜んで全国が注目している中で自衛隊災害派遣のアピール機会にしたのではないでしょうか。
27日に自民党議員の選挙応援に駆けつけた高市早苗総理大臣にも、その場でレクチャーすれば、自衛隊員が生活道路を確保するとか、高齢者住宅の排雪を手伝うとかのありがたい景色が見られたはずです。衆議院選挙でも自民党票が北国で大きく伸びただろう事は間違いありません。
多分、自衛隊の危機管理能力とマニュアルであれば、25日の天気予報を見て災害対応の準備と出動スタンバイをしていたはずです。今度こそ、札幌市とJR北海道と道と自衛隊北部方面で綿密なシミュレーションを元にしたルールとマニュアルを作ってもらいたいと思います。
危機管理とはあらゆることに備えることであり、前回の豪雪被害の反省と経験を生かすことができず、次回もなお今回の反省が活かせないようならば関係者は総入れ替えすべきです。
大地震のときにはプッシュ型の支援という考え方があります。どこかの県でも竜巻災害の時に県と自衛隊の事務方では調整がついていたのに、県幹部の認識の甘さで災害出動要請ができなかったことが報道されています。今回のように市や道やJRの防災担当者の危機管理が追いつかないのであれば、自衛隊側から救援出動を申し入れることを新たなルールにすればどうでしょうか。
また、JRに関して言えば、JR東日本やJR東海など、赤字会社のJR北海道とは比較にならない巨大企業に短期間でも応援をもらうこともマニュアルに入れておくとどうでしょうか。
2019年の千葉大停電では全国の電力各社が東京電力の応援に駆けつけました。経験と実績を次の危機に活かさないといけません。
以前私の主宰する勉強会で講演をお願いした東日本大震災の対策本部を指揮した北部方面総監は「想像できないことを想像して備えるのが自衛隊の危機管理だ」と言っていました。この豪雪で交通が麻痺した真っ最中に大地震が起きて、津波が押し寄せ、火災が発生する、当然長時間停電してブラックアウト状態が起きるかもしれない。避難所では新型インフルエンザや新型コロナ、ノロウイルスが感染拡大する。真冬の北海道の防災危機管理とはこういうものです。
■想像したくないことを想像する
2018年9月の北海道胆振東部地震では、震度6でブラックアウトが発生しました。「豪雪」ではなく「大地震」を主語にシミュレーションすると、2月のマイナス10度の夜中2時に震度6の大地震が起きて、再稼働した泊原子力発電所は自動停止、大規模火力発電所も緊急停止して道内全域のブラックアウトが再び起きる。
折しも爆弾低気圧による大雪が交通を遮断し、危機管理担当者も首長も庁舎までたどり着けず、非常事態対策本部の設置自体ができずにいる。東京出張中だった知事は千歳空港へ帰ることもできない。停電の中で避難所開設も遅れ体育館の鍵を開けるはずの担当者もたどり着けない。冷え切った体育館では停電により暖房も照明も使えない。
職員自身が移動できないのだから非常用発電機も始動できず、段ボールベッドも組み立てできず、毛布も配れない。千島海溝・日本海溝地震ならば大地震の1時間後には30メートルを超える津波がやってくる。車での避難もできない海岸部の住民は歩いて避難タワーまでたどりつく前に凍える海に流されていく。
命からがらびしょ濡れで、腰までの雪をかき分け避難所へ逃げてきた人たちを暖房のない外気温と同じ温度の体育館でどう温めるのか。水道管が凍結するマイナス10度の気温で津波の水をかぶった人たちはまず助からない。
3月11日に起きた東日本大震災でも低体温症やその後の疲労や罹病で災害死した方が大勢いた。昨年、11月の大分市の大火災による避難では、100人規模の避難所で15人の新型インフルエンザ感染者が出た。
危機管理に関わる者は考えたくない最悪の想定でも想定しなくてはなりません。このくらいのシビアシミュレーションは当然考えておくべきです。
さらに、この時点で自動停止中の泊原子力発電所の非常用電源に故障が発見される。毎年行われる原子力防災の避難訓練で指摘されていますが、豪雪で避難道路が寸断された積丹半島まで避難のための民間バスや自衛隊は行きつけるのでしょうか。
2月1日青森県知事は、青森市を対象に自衛隊の出動を要請しました。「命に関わる危険が目前に迫っている」との首長として立派な危機管理センスです。
1月26日の朝9時から札幌南インターチェンジまで4時間、小松空港まで8時間かけてたどり着き、29日には急遽21時までに新千歳空港に帰らなくてはいけなかった大出張の記憶が新しいうちに配信させていただきます。
PS.このメールの内容を、昨日、高市早苗総理政策秘書さんに送りました。今年11月に設立される防災庁の災害復旧マニュアルに豪雪災害への自衛隊協力が反映されることを祈ります。
≫停電・感染対策資材の避難所への寄贈について