寄稿記事 ARTICLE
2024年03月21日
通達の波紋
2月に環境省水銀対策室と経産省化学物質規制課の連名で発信された水俣条約の事務連絡がやっと官民津々浦々に浸透し始めたようです。
いろいろな方からお問い合わせをいただく中でも、水銀規制というベネフィットと、照明という日本の社会基盤機能の喪失につながるリスクとの比較も行わないまま、他国の陰謀にはまってしまった愚かさを考えます。
あかりみらい通信の前号をご覧になった議員が3月議会で本件を質問したところ、自治体側は通達では「既存の蛍光管を使ってはいけないわけではないと書いてあるので、今後国の動静を見極めながら計画を立てていきたい」という答弁だったそうです。まさに指摘してあった通りの誤った解釈と判断です。
蛍光管が新品であっても20年、30年経った安定器に寿命が来ています。対策にもならない対策で危機感を持たずに限られた時間を無駄にしている誤った答弁です。蛍光管はあと3年で製造禁止となり、それまでにLED化が終わらなければ不点灯になります。来週も霞ヶ関で第二ラウンドの情報交換を行ってきますが、経産省も照明工業会もLED照明資材の供給が追いつかない事は自覚していながらも、この根本的な対策を提示できずにいます。皆さん考えてみてください。今まで市町村が建築営繕の公共工事で年間数棟のペースでLED化を進めてきていたものが、1000軒の施設をあと4年間で改修するならば、年間250棟です。予算も人員も足りず見積もりすらできません。
蛍光管を買いだめしても意味がありません。これから3年で日本中の政府、施設、自治体施設、民間施設からどんどん発注されてくるLED需要に供給が追いつくはずがありません。世界中から発注されるガリウム需要に原産国中国はほくそ笑んでします。
いま全国で電線が手に入らず電気工事が滞っています。LED照明ももうすでに器具交換の資材ですら品薄になってきているそうです。それでも照明工業会は、自分たちの利益にならない管交換LEDへの妨害を止めません。
先日沖縄のある市から問い合わせがあり、管交換でLED化を考えているのだが、グリーン購入法の手引き の中に「G13口金(現在の蛍光管の口金です)のLEDについては当面グリーン対象にしない」との全く意味がわからない項目があったとのことです。こちらについても環境省の環境経済課に申し入れているところですが、ガラパゴスで作った自社の口金はグリーン対象としておいて、世界標準のG13口金を対象としないという利権まみれの愚かな工作をやっていたことが発覚したわけです。
経産省も認知していながらいまだに「管交換は火が出る」とか「安定器を取り外すのがガイドラインだ」(メーカーの勝手に作ったガイドラインです)とかお客様を騙すデマを撒いています。みなさんは騙されないように。
器具交換が親の仇というわけではありませんが、各メーカーの各品番でライトバーの規格が全て違うという、工業生産品としてありえないガラパゴス戦術に陥ってしまった当事者たちが、まだ水銀条約でも暗躍しています。
世界の標準規格がありながらも自社の営業利益のために、日本中のこれからのライトバーの汎用性をなくしてしまったのです。20年後30年後にこの器具一体型のガラパゴスライトバーがまだ製造されているのかどうか。30年後にそのメーカーがまだ倒産せずに生き残っているのかどうか。日本のメーカーは一世を風靡した無電極灯も冷陰熱管もコンパクト蛍光灯もナトリウム灯もまだ使えるのに生産を終了してしまいました。いま4月からナトリウム灯も入手できなくなりトンネルの安全性が危惧されています。先々もう一度器具全部を交換する壮大な無駄をしたくなければ、「器具交換LEDのライトバーの供給は30年後もずっと続ける」という念書をとってから採用することをお勧めします。
通達が到達してもみなさん判断を間違えています。民間ではこれから数百万円、数千万円の設備投資が必要となります。この資金対策は政府が数兆円規模の財政支援をしなくては中小金融機関では対処できません。
自治体ではすでに3月の来年度予算には間に合わず、6月議会で補正予算を組むにしても、今すぐに膨大な施設の試算見積もり作業が必要になります。
その解説は 月刊クォリティ 2024年3月号 をご覧ください。
解決策は、あかりみらいオンラインセミナー でお伝えします。