寄稿記事 ARTICLE

あかりみらい通信

2024年06月06日

良い入札と怪しい入札

あかりみらい通信

一昨日、永田町の参議院会館にて経産省戦略企画室、省エネルギー課、情報産業課、化学物質管理課、環境省水銀対策室と「水銀に関する水俣条約による2027年蛍光灯製造禁止問題」について情報交換してきました。
今まで重ねてお伝えしてきたように、あと3年半で日本中の照明をLED化してしまわないと、日本の社会経済に必要な照明機能が損失してしまいます。当方の提言は、水銀と化学物質の所管では総合的な政府対策を打っていけないので、「エネルギー基本計画の改定の中に省エネを章建てして2027年までの完全LED化を政策として織り込む」事を経産大臣宛ての提言書を提出しています。
≫経産大臣への提言

結局、驚いたことに経産省情報産業課では、照明工業会の言いなりに「故障した順に修繕していくならば生産は間に合う。安定器の寿命が来るまでは買いだめした蛍光管を使えば良い」という見解で、全く自治体の現状を理解せず危機意識をもっていないことが判明しました。
彼らは全国の自治体が本気でLED化に取り組むと何億灯のLED照明が必要になるか調査も需給バランスも把握していないのです。自治体はこれではもう自分たちで自分の身を守るしかありません。9月の議会に向けて急いで計画を進めてください。

トヨタが型式認証の不正を行った衝撃のニュースが流れていますが、パナソニックも自社のカメラで撮っていない写真をパンフレットに使うなど企業のコンプライアンス違反が続出しています。パナソニックと照明工業会がLED照明の器具交換型を売りたいために「管交換は火が出る」とデマを撒いて利権誘導のガイドラインを作っていることもいままでお伝えしています。建築担当者はご注意ください。
一方では、公共施設のLED化入札現場でも公務員にとってはあってはならない官製談合を疑われる入札が散見されるようになっています。以下、「良い入札と怪しい入札」の事例を紹介します。これからプロポーザル入札を設計しようとしている自治体は参考にしてください。

■「良い入札と怪しい入札」
今、水銀水俣条約による2027年蛍光管製造禁止が全国の自治体で深刻な問題となっています。数百件、数千件の公共施設、数万戸の公営住宅をあと3年半でLED化しないと地域の灯りが維持できなくなります。いままでの建築営繕のやり方では数億円の調査費をかけて1年がかりでも見積ができないのは明白です。施設数が数百、数千件に及ぶ中核都市や都道府県は途方に暮れています。
しかし、従来の建築営繕・公共工事の手法では不可能でも、民間リース方式で図面から自動試算する方法ならば短期間で見積もり額が出て、すぐに実行の判断ができます。特許のAIによる図形認証試算プログラムならば、一年掛りの高額な調査がごく短期間で施設毎の精密な積算による総予算の算定ができます。たいていの自治体では、公共工事見積もりの3分の1程度になったと驚いています。
≫あかりみらいAI図形認証試算プログラム動画

さて、このような地域に大きなベネフィットをもたらす改革についても、利権業者や一部の癒着を疑われる公務員が暗躍しています。

北海道のH市(函館市ではありません)では一昨年、地元鉄道会社の元役員が口利き紹介した大阪の会社に1億5000万円もの公共施設のLED化の随意契約を行い、住民監査請求を受ける事態になりました。当社は市議会議員からの要請で相見積もりを提出したのですが、この大阪の会社のほぼ半額でした。この大阪の照明メーカーは学校の外構照明を4灯しかないものを211灯と水増ししてリース代に上乗せしていました。地元誌の取材によると電気工事会社からのキックバックが市の上層部に流れたのではないかとの疑いもありましたが、警察では立証できなかったそうです。
≫北方ジャーナル 2022年10月号

これほど露骨な事件でなくても、入札仕様書を特定の業者に有利となるように工作し競争相手を参加させなくさせるような悪質な入札妨害があちこちで起きています。これが担当職員の無知や誤解のせいならばまだ救われますが、一部のリース会社や照明メーカーとの癒着や一部地元電気業者の選挙がらみの忖度による入札妨害ならば官製談合として指摘されることになります。もしもここに「天の声」などが入ったものならばまごうことなく事件です。

当社が全国で経験してきた50近くの自治体LED化プロポーザル企画競争入札では、この大プロジェクトを実現できる実力と体制、自治体の一括LED化を成し遂げてきた経験と実績、最新省エネ製品による省エネ効果をもたらす知識と調達力、電気料金削減額と費用対効果、地域の電気工事会社をまとめ上げる運営管理と地域経済効果などを総合的に公正に評価して、この大きなプロジェクトを安心して任せられる専門知識を持つコンソーシアムを決定しています。
その要項や仕様書も毎年全国で洗練、合理化されてきて最新のものは、ほぼこのようなものになっています。
≫長門市LED化2024年5月要項

価格だけの入札では、安かろう悪かろうの製品が入ってきたり、儲けだけを狙った経験のない無責任な会社が選ばれてしまうこともあります。大事業を失敗させないためには総合的な評価が必要です。本来、公平公正なはずのプロポーザル入札でもおかしな圧力や工作で不公正な仕様書が仕組まれる例があります。

最近もある自治体で、特定の建築系リース会社に有利となるように細工された不自然な入札要項が公開されています。あまりにおかしなところが多数あるので、20数カ所にのぼる質問事項を出しましたがその過半数には回答がありません。
以下、反面教師となる危うい入札の事例として紹介します。(市の名前は伏せています)

≫●●市2024年5月要項・仕様書
≫●●市質問への回答

【要項仕様の問題点と思われる部分一部解説】
〇50以上の総額4億円もの施設をLED化し引き渡しするのに、年度末にその全ての施設が終了するまでリース支払いを始めない。
← 自治体にとっては有利で楽な条件ですが、商道徳の根本に反していて、これでは地元工事会社への毎月の支払いもできません。外資系や大手のリース会社しか参画できず、地元の資金力の劣る中小リースには参加できない不公正な条件です。全国の大多数の自治体では各施設のLED化引き渡しが終わった順にリース開始をしています。世界のリースの常識です。本来建築発注でも高額で長期に亘る場合には半金先渡しなどの措置が取られるもので、自治体の基本姿勢が問われる自治体ハラスメントとも言える条件です。

〇特定建設業の許可を持っている業者でなくては工事ができない。
← リース製品の取り付けで一施設あたり数十万円、数百万円の簡易な管交換工事は特定建設業者でなくても地元の中小の電気屋で工事可能です。いまこれほどの人手不足の時代に、特定の大手電気業者と手を結んだリース会社にしか応札できない仕組みです。この市では入札が公示された時点ですでに地元の特定建設業を持つ電気工事会社がすべて特定のリース会社に抑えられていました。事前に要項の内容も公示日も漏らされていたことになります。この誘いを受けた電気工事業者によるとリース会社から事前に想定価格も提示されたそうで、企画提案のための見積もり作業をする前に応札価格も事前に漏れていた疑いもあります。入札委員会に訴えられると入札取り消しになる可能性のあるケースです。

〇管交換型LED照明を取り付ける際には安定器を取り外す事。
← 溶接されている安定器を取り外すことは無理です。費用も時間もかかり、その作業になんの意味もありません。科学的、物理的な根拠もない経産省も否定している制約条件です。
特に2006年以前の埋め込み式の照明LED化の場合には、いったん器具をはずさなくてはならないためアスベスト含有の検査も必要になり、アスベスト工事資格者が必要になる可能性があります。これは照明業界が器具一体型のLED照明に誘導するために広めた「管交換は火が出る」デマチラシを信じた担当者が必要のない仕様を定めたか、管交換を勧める会社を参入できなくする悪い例です。
≫あかりみらい通信 デマチラシへの経産省の見解

〇LED交換作業を開館日も閉館日にも許さずに平日時間外にすること
← 政府の働き方改革に逆行する目を疑う仕様です。この市の担当者は何か勘違いしていて、「自治体が決めたことならば応札者は黙って従うべし」との奢った姿勢が見えます。前記のリース料金一括スタートも民間の常識を弁えない手前勝手な我儘ルールです。

〇自然災害や戦争による不可抗力の損害であっでも応札者は責任を持つこと
← このような条件の入札への応札は誰にも無理です。中には「市の故意による損傷」「市で起きた暴動」まで想定しています。常識に乗っ取った公正な入札が求められるのに、担当者の妄想を誰もチェックしなかったのでしょうか。これで落札したリース会社は本社と動産保険を掛ける保険会社になんと説明するのでしょう。初めから落札者が決まっていて契約後に2者間で制約条件を変えるのならば、これも巧妙な官製談合の一種です。

〇入札参加要件での縛りについて
← この市の参加要件には、特定電気工事業のほかに、「調査設計とその他役割を担う会社」に対して一級建築士、監理技術者、一級電気工事、施工管理技士、技術士、エネルギー管理士などの資格を求めています。工事会社が電気工事資格を持つのは当然ですが、調査やプロジェクトの運営、調整をするのに国家資格は必要ありません。現に上でご紹介したAIによる図形認証プログラムに一級建築士は必要ありません。 参加資格に不当で不合理な条件を付けることで参入妨害をしています。市民にとっては複数の候補者から公平に企画提案の内容を聞き、厳正な評価で落札者を決定すべきなのが当然です。全国でもこれほど露骨に建築系リース会社に誘導する要項はみたことがありません。ご注意ください。

最後に、この市は半年以上前から完全LED化のアドバイスをして、脱炭素担当を中心とした関係者たちが熱心に勉強してきた市です。今回は最初の50施設のLED化をスタートさせる大事な入札でしたが、要項、仕様書策定の段階で解説にあるような「危うい入札」になってしまいました。

この市ではこの後に850施設、100億円に近い公共施設を残していますが、市民のためにも巨額なプロジェクトにおかしな疑いを挟む余地のない公明正大な入札に改善してもらいたいものです。

官製談合の事例については、次号でも連載します。

この件も含めて、自治体完全LEDを解決させる方法と注意点などをWEBセミナーでお伝えします。
6月は明日7日10時からと24日15時から、7月は8日と26日の2回なので以下のページより申し込みください。
≫あかりみらいオンラインセミナー