寄稿記事 ARTICLE

あかりみらい通信

2025年06月02日

交付金は期待できない

あかりみらい通信

5月28日北海道新聞に「国の学校施設交付金」の不採択が急増している現状が掲載されました。≫(北海道新聞記事)いままでどうりのやり方では全く間に合いません。それではどうすればいいか真剣に考えてください。
あかりみらい通信や各紙で警鐘を鳴らし続けている「照明の2027年問題」について、日本の照明を所管する経済産業省情報産業課は2027年問題など存在しないかのように不作為を決め込んでいます。ここが問題を認めない限り国はなにもしてくれません。

■全く資材が足りない
時事通信と東京新聞の日本照明工業会への取材では、まだLED化されてない蛍光灯は7億灯あり、1灯に2本の蛍光管がついているとすると14億本。丸めて10億本としても、昨年度の蛍光管型LED生産量600万本の100年分になります。これをあと2年半で生産するなど全く無理であり、大手商社が中国、韓国、台湾、ベトナムなどから億本単位で輸入するしかありません。

■都道府県はすでに破綻
責任者である政府が全く動かない中で、自治体も教育委員会も議会もまだこの危機の本質を理解していません。この国家的な危機に対応できる資金も資材も民間プレイヤーもいないのです。
特に、都道府県は1県で数千件の公共施設を持っており、数十万から百万本の蛍光管型LEDを調達しなくてはなりませんが、いまの状況ではこの規模の募集にはどんな企業も対応してくれません。
都道府県規模の需要には、数百億円を資金調達できて、1000万本を海外調達でき、1000現場を工事管理できる実力があるリース会社やゼネコン級の電気工事会社が必要なのですが、そういう会社は地方に存在しません。民活募集しようにも頼む相手がいないのです。
北海道庁の場合は1万棟以上の公共施設があり、さらに2万戸の道営住宅があります。担当職員は予算見積もりするにも全く手もつけられず、教育委員会に至っては今回の記事でいまだに交付金だのみで建築発注をしようとしていることがわかりました。交付金がつかないのならばどうするのでしょう。
学校だけを考えてみても、当社が試算協力した青森県のある市の教育委員会だけでも67学校で5万灯、8億円の試算をしています。
全国47都道府県、1720自治体の教育委員会が一斉に動いたとして、学校だけで何千万灯のLEDが必要となるでしょうか。モノはない、カネもない、交付金も付かない、手伝ってくれるヒトもいない。早くパートナーを見つけて解決策を打たないと3年後には安定器が切れた順に停電です。

■起債も交付金もムリ
全国自治体が今まで通りの公共建築営繕の手法である起債と交付金で賄おうとしても、全国10兆円の起債を引き受けることのできる金融機関などありません。環境省も経産省も全国から殺到する申請に対応できる予算などつけることはできません。
これこそが脱炭素金融GXの最優先課題であり、政府が緊急財政出動しなければならない事態です。
首長や議員のみなさんは、政府に質問し、要望するところから始めなくてはならないのです。真剣に考えるべきことです。
日本の照明問題を所管しているのは、日本照明工業会を管轄する経産省情報産業課です。
2027年9月には製造を止めることを決めてしまった蛍光管対策をどうしようとしているのか。誰が考えても全く足りるはずないLED 需要への供給をどう間に合わせるのか。
まだ国民のほとんどが知らないこの非常事態を隠し続けているのはなぜか。原子力再稼働の支障になるから、自分たちの不作為を公にすることになるから、蛍光管を買いだめさせておけば何とかなると信じたふりをしている、このどれかです。コメ不足を見てみないふりをしていた農水省官僚の不作為の罪でいまの日本が苦しんでいます。

■2027年問題は存在しない?
ちなみに、ある通信社の経産省ヨイショ記事(添付)では「2027年問題にご注意」という愚か極まりない匿名リーク記事を書かせています。「LED化は順調に進んでいる」「2027年問題を商売の種にしてLEDを売り付ける悪質業者がいるので注意」「蛍光管は使用を禁止したわけではないので慌てなくてよい」「いっぺんに発注が始まると値上がりするので計画的に」というばかばかしい記事です。情報産業課は、あたかも照明危機など無いかのように保身と責任逃れに走っています。
政府は一向に動き出す様子はありません。自分の身は自分で守るしかありません。47都道府県と1720市町村が動き出しては、この問題に対応できる民間企業も全く足りなくなります。
民活方式が通用するうちに、まだ民間リース会社や国内メーカーが対応できるうちに方針を固めて、いますぐに行動してください。

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